トピックス

みっけトリビア

2012年01月12日

【みっけトリビア】「渡り」に隠された戦略

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 この冬は、ツグミやジョウビタキなどの渡り鳥が少ないようですが、カモやガンの仲間など水辺の鳥はどうでしょうか?

 「渡り」とは毎年同じ季節に二つの地域を行き来する移動のことで、日本で冬または夏を過ごす渡り鳥は片道何千kmもの旅をします。冬鳥は、北の国が雪や氷に閉ざされて食べ物が十分に得られなくなるため南に移動してきます。そのまま日本にとどまっても食べ物は得られるはずですが、春から夏にかけては北の国に食べ物となる生きものがより多く発生します。彼らが春にまた北へ戻っていくのは、その方がより確実に子育てができるからです。

 ところで、昨年の冬に日本や韓国で毒性の強い鳥インフルエンザに感染したカモなどの野鳥が発見されたり、ニワトリが感染するなどの被害が発生しました。渡りをする野生動物は、このように国境を越えて感染症を広げることがあります。しかし最近の研究では、感染症でその動物の群れが全滅してしまったり、他の種へ感染が拡大することが、渡りによって避けられているのではないかということがいわれています。

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 メキシコやカリフォルニアで越冬するオオカバマダラというチョウは、春になると発生を繰り返しながらカナダにまで移動します。3300kmも移動した個体の記録があるそうです。しかし、フロリダやハワイに分布するオオカバマダラは全く移動しません。このチョウがもっている、微生物の寄生による病気の程度を調べてみると、より長距離を移動する群れほど病気の個体が少なく、病気を持っていても症状は重くないということがわかりました。

 つまり渡りをすることは、このチョウの群れを健全に保つのに重要だと考えられます。研究者は、他の動物にもこれらが当てはまるのではないか、と考えています。ある場所にすむ動物に感染症が発生しても、その群れが移動することで、その場所での流行は収まります。また病状が重い個体は渡りの途中で脱落してしまうため、群れの中に病気の個体は少なくなり、毒性の強い病原菌や寄生生物は排除される、ということです。 

 渡りという行動は、食べ物などの資源、命に関わる感染症、捕食者などとの関係の中で、種が生き残るために何万年もかけて進化させてきた戦略といえます。

 しかし近年、多くの渡りをする動物に異変が起きています。北米を移動するバイソン、ヨーロッパの西側を回遊するセミクジラ、南アフリカを横断するスプリングボック(ガゼル)などが移動をしなくなったといいます。北海道には、流氷とともにゴマフアザラシがやってきて越冬しますが、近年、初夏に北へ戻らずそのままいついてしまう個体が増えています。

 これらの原因ははっきりしていませんが、渡りの休憩地における森林伐採などの開発、都市化や農地化、渡りのルートを閉ざすダムなどの建造物、そして地球温暖化が動物たちの渡りに大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。その結果、移動しなくなった野生動物が病気に感染しやすくなったり、あるいは野生動物の分布や密度が変化し、野生動物・家畜やペット・人 が相互に接触する機会が多くなって、今まで起こらなかったような感染症が発生する可能性があります。

 私たちは他の動物からの病気の感染を心配していますが、実は人間自らの活動がその危険性を高めているのかもしれません。

(参考・引用文献)
樋口広芳. 2005. 『鳥たちの旅』日本放送出版協会.
S.Altizer, et.al.. 2011. Animal Migration and Infectious Disease Risk. Science, 331(6015): 296-302.
Scientific American ホームページ
 http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=migrations-disappear-and
 http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=moveable-beasts
Science Daily ホームページ
 http://www.sciencedaily.com/releases/2011/01/110120142323.htm

2011年12月08日

【みっけトリビア】産卵は計画的に!?

maimaiga♂♀.jpg 「カマキリが高いところに産卵すると雪が多い」という言い伝えを聞いたことはありませんか。その真偽のほどは定かではありませんが、マイマイガというガは、雪が多い地方では、雪に埋もれる高さに卵を産み付けることが多いそうです。それは、鳥に食べられるのを避けるためだと考えられています。

 マイマイガは北半球の広い範囲に生息しています。メスは年に1度だけ、秋に産卵します。300500個ほどの卵を木の幹にまとめて産み付け、その表面に自分の体の毛をこすりつけて保護します。卵は越冬して春に孵化します。幼虫はサクラ、ケヤキ、コナラなど様々な広葉樹の葉を食べますが、カラマツなど針葉樹も好み、100種以上の食樹が知られています。成長した幼虫は、糸をはいて木からぶら下がり風に乗って分散するので「ブランコ毛虫」とも呼ばれます。kemushi.jpg

 マイマイガが木に産卵する高さと積雪の関係を調べた研究によると、北海道では雪が多く食べ物が少ない2月〜3月に、マイマイガの卵塊がいろいろな野鳥に食べられます。積雪高と1日に食べられた卵塊数の関係をみると、雪がたくさん積もった日には卵塊が多く食べられ、雪解けとともに食べられなくなります。野鳥にとってマイマイガの卵塊は、他の食べ物がない時にやむを得ず食べる非常食のようです。
 鳥が食べるのは、雪に埋もれていない高さにある卵塊。ならば、食べられないようになるべく木の根元の方に産み付ける方が安全です。しかし、幼虫が孵化してから柔らかい新芽にありつくのには、枝に近い高い位置にある方が便利で安全です。

 いくつかの地域で卵塊が産み付けられている高さを調査した結果、gojjyukara.jpg
京都、奈良(雪がほとんど積もらない)...多くの卵塊が枝の出ている高さに産み付けられていた(それでも鳥はほとんど食べない)
富山(豪雪地帯)...卵塊は雪の下になる高さに産み付けられていた
北海道(積雪1mくらいの地域)...卵塊の1/4ほどは地面近くに、残り3/4は枝に近い高さに産み付けられていた

  これは同じ種の昆虫でも、生息する地域の積雪状況によって、卵の安全と幼虫の食事のどちらを優先させるかを選択し、それが長い年月をかけて定着した結果なのでしょう。積雪がそう多くない地域では、年によって積雪量の変動が大きく、産卵時期にどれくらいまで積もるか予想はできません。北海道の例では、このようにメスが個体によって産み付ける高さを変えることで、マイマイガ全体としては個体数がほぼ安定していると考えられます。

 ところで、マイマイガは約10年ごとに大発生します(同じ場所にではなく移動するため、英語では「ジプシー・モス」といいます)。しかしそれに引き続き、幼虫にウイルスや「エントモファーガ・マイマイガ」というカビなどによる病気が蔓延します。またブランコサムライコマユバチなどの寄生バチや寄生バエも要因となって、大発生は1〜3年で収まります。

 小さなガ1種をみても、気象や他の多くの生きものとの密接な関係があり、それらがバランスを保っているからこそ、その地域に生息していることがわかります。開発や地球温暖化でそういったバランスが崩れることは想像できますが、それによってどれだけの生きものが絶滅の危機にさらされるかは予想がつきません。 


(引用・参考文献)

青木襄児. 1998.『虫を襲うかびの話』全国農村教育協会.

桐谷圭治. 2001.『昆虫と気象』成山堂.

東浦康友・上条一昭. 1978. マイマイガ大発生の終息過程の死亡要因. 北海道林業試験場報告,

  15: 9-16.

東浦康友. 1989. マイマイガの産卵場所えらび --積雪の有無と鳥の補食と. インセクタリゥム,

  26(7): 204-211.

 

2011年11月08日

【みっけトリビア】高山の生きものと温暖化

 いきものみっけの対象種であるツマグロヒョウモンやナガサキアゲハは、地球温暖化の影響により、分布を拡大していると考えられている生きものです。もともと南の地方にすんでいた生きものは、気温の上昇により、以前は分布していなかった北の地方や標高の高いところへ分布を広げる可能性があります。

 これに対し、これまで北の地方や標高の高いところにすんでいた生きものたちはどうでしょう? 寒冷な気候の高山にすむ生きものは、今よりも気温が高くなると、より標高の高い山の上へ引っ越していかなければ生きられません。そうなると、その生きものがすめる環境は狭くなってしまうため、個体数の大幅な減少や絶滅の可能性があります。

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本州中部の高山だけにすむライチョウ(ニホンライチョウ)は、世界のライチョウの中では最南端にすむ亜種です。1万年ほど前に最後の氷河期が終わって暖かくなるにつれ、標高の高い涼しいところへと移りすんで生き残ってきた種(遺存種)と考えられています。

 25年前の報告では、本州中部の高山に合計3000羽ほどいると推測されていましたが、現在の生息数はそれより40%ほども減少しているそうです。さらに、もし年平均気温が3℃高くなると、日本のライチョウはほぼ絶滅すると試算されています。高山植物のお花畑やハイマツが広がっているような、ライチョウが生息できる高山の環境が狭まるからです。また近年はニホンジカやニホンザルが高山にも侵入し、ライチョウが食べる高山植物を食い荒らしたり、観光地化によるごみの増加に伴い、天敵のカラスも増えているといいます。現状では、地球温暖化がライチョウの生息に影響を与えているという証拠は得られていませんが、ライチョウの生存を脅かす要因は温暖化だけではありません。

 「気温が上昇して高山の環境が狭まる」のは、これまではより標高の低いところに生えていた植物たちが、高山の環境へ進出してくるからです。高山植物はより標高の高い方向へ移動せざるを得ませんが、それは、高山植物も失われる可能性があることを意味します。頂上より上には逃げ場がありません。実際にヨーロッパアルプスで、高山植物が山の上部へと移動しており、その原因が温暖化によるものに違いない、という報告があります。

 海外の研究によれば、これまで考えられていたよりもはるかに早い速度で、多くの生きものたちが気温の上昇の影響を受けてより高緯度の地域や標高の高いところへ移動しているそうです。この研究では、2000種以上の動植物のデータを分析した結果、平均して10年間に約17km高緯度地方へ、約11m標高の高い方向へ移動しているということです。

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 2100年頃には、平均気温が今よりも約2℃上昇すると予測されていますが、高緯度地方や高山ではこれをはるかに上回る上昇が起こると考えられています。南にすむ生きものが分布を広げ、それまでそこにいた他の生きものに影響を与えることも心配ですが、日本ではもともと分布域が限られ、個体数が少ない希少な高山の生きものが受ける影響はより深刻です。

(参考・引用文献)
堂本暁子・岩槻邦男. 1997. 『温暖化に追われる生きものたち 生物多様性からの視点』築地書館.
「生きもの異変」取材班. 2010. 『生きもの異変 温暖化の足音』産経新聞社.
I-Ching Chen, et.al.. 2011. Rapid Range Sifts of Species Associated with Levels of Climate Warming. Science, 333(6045): 1024-1026.
The University of York ホームページ http://www.york.ac.uk/news-and-events/news/2011/research/wildlife-responds/

2011年10月14日

【みっけトリビア】ローカルみっけウィーク結果まとめ

※注記

・報告日で抽出したデータでとりまとめた

・特筆すべき事項を取り上げて解説しており、報告のあった全ての地域の結果について言及していない

 

ローカルっけウィーク(8/12~9/11内容ついさい

 

    ツマグロヒョウモン 報告件数 141

tumaguro-2.jpg 最北の報告は栃木県那須塩原市でした。北陸地方では石川県から報告がありました。東北地方からの報告はありませんでしたが、みっけウィークの期間外に宮城県から2件の報告があります(1件は幼虫)。宮城県からは2010年に2件、2009年に1件の報告があり、今後ツマグロヒョウモンが定着するのか注目していく必要があります。

 

    ナガサキアゲハ  報告数 41

 最も北からの報告は、茨城県水戸市と栃木県栃木市でした。北陸地方や東北地方からの報告はありませんでした。

 太平洋側のナガサキアゲハの分布の北限は、10数年前は愛知県南部でしたが、2009年いきものみっけでは茨城県や栃木県から報告がありました。2010年いきものみっけでは、福島県からも報告がありました。しかし、今回の関東地方南部からの報告に「子どもの頃は南国のチョウだと思っていたのでびっくりした」(埼玉県春日部市)、「クロアゲハはよく見るが、初めて見る種類だった」(千葉県船橋市)というコメントがあったように、まだ関東地方でも、毎年安定して繁殖を繰り返しているのは一部の地域に限られるようです。

 

    アオスジアゲハ  報告数 155nagasakiageha-2.jpg

 アオスジアゲハは最も多くの報告件数がありました。

 東北地方では、秋田県と青森県から1件ずつ報告がありました。2009年・2010年のいきものみっけを通しても秋田県からの報告は初めてです。「海岸近くのタブノキ林で4頭飛び回っていた」というコメントでした。青森県で報告のあった深浦町にはやはりタブノキ林があり、2007年に最初の発生が確認されて以降、毎年発生を繰り返しているようです。

 

    クマゼミの鳴き声  報告数 70

 関東地方南部から41件、北陸地方からは新潟・石川・福井県から各1件ずつ報告がありました。関東地方北部や東北地方からの報告はありませんでした。

 東京都からは、「東京では初めて聞いた」(中野区)、「昨年までは聞こえなかった」(江東区)、「とうとうここまで来てしまったようだ」(八王子市)といったコメントが寄せられ、まだ東京都全域に定着しているとは言えないようです。また千葉県市川市から「年々多くなる。まるで関西のように大合唱が聞ける」というコメントがあった一方、すぐ東隣の船橋市にお住まいで「去年までは一度も聞いたことがなかった」という方もありました。関東地方では、明らかに個体数が増えているのはまだ一部の地域だけのようです。

 福井県敦賀市からの報告には「福井県にも進出してきていますね」とコメントがありました。福井県では1990年以前からクマゼミが確認されており、日本海側では福井県までは定着していると考えられます。今後、クマゼミは石川県や新潟県にも定着するようになるのでしょうか?

 

    アカボシゴマダラ  報告数 49akaboshi-zantei-2.jpg

・埼玉県からは9件の報告がありました。1995年に関東地方で初めてアカボシゴマダラがみつかったのは、現在のさいたま市桜区でした。それがその地に定着することはありませんでしたが、2009年頃から、東京都の分布地域に近い南部の市区や北本市などで目撃されるようになったようです。さいたま市浦和区と春日部市からの報告のコメントには、title.jpg「初めて見るチョウだった」とあり、これらの市区ではまだ個体数は少ないと思われます。一方、北本市からの報告には「このフィールドでは最近は特に増えているそうだ」というコメントがありました。埼玉県内では、すでにアカボシゴマダラの個体数が多い場所もあるが、ごく最近侵入した地域もあるようです。

 みっけウィーク期間中ではありませんが、群馬県と境を接する熊谷市や、栃木県小山市からも報告が寄せられており、アカボシゴマダラの北への分布拡大の一端がうかがえます。

・千葉県からは2件、柏市と我孫子市から報告がありました。千葉県では他に、野田市、松戸市、富津市、南房総市、館山市、君津市での観察例があるそうです。これらの地域は、東京都と埼玉県に接する北西部の地域と、南部の東京湾岸の地域です。埼玉県・東京都・神奈川県から東へ移動してきた個体が、千葉県で分布を広げているのかもしれません。

東京都では、文献(岩野2010)に記録のなかった北区およびあきる野市から報告がありました。

 

 

(参考・引用文献)

工藤誠也. 2008. 青森県におけるアオスジアゲハの発生記録. 月刊むし, 445:9-12.

岩野秀俊. 2010. -6-4 南関東に定着したアカボシゴマダラ. 日本の昆虫の衰亡と保護,

(石井 実 監修):253-258.

環境省生物多様性センター. 2010. 日本の動物分布図表.

千葉県生物多様性センター ホームページ  http://www.bdcchiba.jp/monitor/index.html 

2011年09月08日

【みっけトリビア】トンボの島よ、いつまでも・・・

 皆さんは、トンボと聞くと何トンボを思い出すでしょうか? 赤トンボ、イトトンボ、オニヤンマ、シオカラトンボ...。昆虫の研究者でなくても、いろいろな種類のトンボが思い浮かぶことでしょう。一方、ロシアには、トンボとバッタを一緒にした単語があるだけだそうです。日本には「秋津島(あきつしま)」という異名がありますが、この「秋津」というのはトンボのこと。そのくらいトンボの種類が大変多く、そしてトンボ好きな国民なのです。しかし近年、トンボたちは大きな危機に直面しています。

 現在、日本に定着しているトンボは184種16亜種がいます。そのうち、固有種(日本にだけ生息する種)は56種もいます。ヨーロッパには全土で合計しても116種しかいないといいますから、いかに日本のトンボ相が豊かであるかがうかがえます。

 しかし、環境省が作成した国内の絶滅のおそれがある野生動植物種のリスト(レッドリスト)には、44種2亜種のトンボが記載されています。全体の約4分の1の種に、絶滅のおそれがあるのです。

 トンボが絶滅にいたる原因は、大きく3つが考えられます。

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1. 生息地の消失や改変
 埋め立てや護岸、池の公園化や釣り堀への改変、水田のほ場整備や休耕田・放棄田の増加など

2. 生息環境の悪化
   農薬や生活排水の流入、ゴミ等による水質汚染、水草の減少による水質の悪化

3. 外来種による影響
 アメリカザリガニ、ウシガエル、オオクチバス(ブラックバス)やブルーギルなどにより幼虫や成虫が捕食される、ホテイアオイやオオフサモなどが繁茂し水面を覆ってしまう
※アメリカザリガニは水草も食べてしまうため、水質が悪化したりトンボの産卵場所が失われてしまう原因にもなる

右図「ベッコウトンボの生息地」:福永健一他 (2003: Tombo 46: 29-30)、日本蜻蛉学会連絡誌(2007~2009)、レッドデータブックあいち(2009)から分布記録を収集し、過去の基礎調査データに追加し作成した。(出典:日本の動物分布図集(2010)環境省生物多様性センター)

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【絶滅の危機に瀕しているトンボ】

● ベッコウトンボ
 ベッコウトンボは1950年代までは日本の西南部を中心に平地のため池等に広く分布していましたが、2008年には静岡、山口、福岡、長崎、大分、鹿児島の6県に生息地が減少してしまいました。残された生息地では、アメリカザリガニの駆除や草刈りなど生息地の保全や、飼育による増殖などが試みられています。

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● オオモノサシトンボ
 オオモノサシトンボの生息地は、関東地方の利根川流域と新潟平野、仙台平野に限られています。以前は135の生息地が確認されていましたが、2000年には22ヵ所と、およそ85%の生息地が失われてしまいました。生息地が人口の多い地域と重なるため、埋め立てられたり水質が悪化したことがその主な原因ですが、公園として残されたにもかかわらず、配慮のない管理が原因で絶滅したとされる例もあります。

  ● 小笠原の固有種
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 小笠原諸島のトンボ類は5種の固有種が知られていますが、全てが環境省のレッドリストに記載されています。これらの主な生息地であった父島では1980年代に、母島では1990年代に、いずれも個体数が激減し、現在までに父島では5種全てが絶滅し、母島では1種だけが生き残っているという状況です。これらの固有種が減少した原因は、
・道路やダムの建設により、森が切り開かれ、土地が乾燥化したり河川が失われてしまった
・野生化したヤギの食害で、森が裸地になり土地が乾燥化した
・戦前に沖縄から移植されたアカギやギンネムという樹木が繁茂して沢を覆い、トンボが活動する環境が失われてしまった
など、複数あるとされていますが、最も大きな要因は、北アメリカ産のトカゲ「グリーンアノール」による捕食だと考えられています。小笠原では他にもグリーンアノールによって個体数が減っている陸生昆虫は多く、チョウの一種「オガサワラシジミ」も絶滅寸前といわれています。

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小笠原の外来種 グリーンアノール
(左)写真提供:アーさん(みっけにん)
 2009年8月6日撮影
「宿泊した民宿の庭先で確認。地元の方の話では、かなり繁殖しているとのことでした。」
(右)写真提供:戸田光彦 氏
 2004年9月15日撮影(父島)
 天然記念物のオガサワラゼミを捕食

 トンボの減少・絶滅要因は種によって、また地域によって異なりますが、他の生きものや環境との関わりが保たれていたからこそ、その生きものはその場所でずっと生きてきたのだということが、トンボの危機からもみえてきます。日本がいつまでも「トンボの島」でいられるためには、その生息環境を注意深く見守ることが大切なのですね。

(参考・引用文献)
加納一信. 2001. 絶滅危惧種オオモノサシトンボの現状. 昆虫と自然, 36(7):10-13.
苅部治紀. 2004. 小笠原固有トンボの現状−トンボ類はいつごろ、なぜ減ったのか?−. 神奈川県立博物館調査研究報告(自然), (12):31-45.
松木和雄. 2008. ベッコウトンボの現状と保全. 昆虫と自然, 43(9):20-24.
(財)自然環境研究センター 編著 2008. 『日本の外来生物』平凡社.
環境省生物多様性センター 2010.『日本の動物分布図集』平凡社.
石井 実 監修 2010.『日本の昆虫の衰亡と保護』北隆館.