アブラゼミ2.jpgアブラゼミ
  鳴く虫と言えば、セミやキリギリス・コオロギの仲間が思い浮かぶことでしょう。キリギリスやコオロギの仲間であるクツワムシやスズムシ、エンマコオロギなどの昆虫は、みな左右の前翅をこすり合わせて音を出しています。いわば、バイオリンなど弦楽器のような音の出し方です。これに対してセミの仲間は、腹部の脇の内側にある「発音まく」という部分を筋肉で振動させて音を出しています。セミの腹部の中は、ほとんど空洞で、ここで音は共鳴し増幅されてより大きくなります。セミの仲間は、昆虫の中でもっとも大きな鳴き声を出すことができますが、そのしくみはここにあります。まさに、「腹の底から声を出して」いるわけです。


  セミが鳴いている時を観察すると、腹部の腹側の左右にある「腹弁」が震えているため、ここで音を出しているようにも見えますが、この「腹弁」は音を区切る働きをします。それによって「ミーン、ミーン」とか「ツクツクホーシ、ツクツクホーシ」といった、フレーズの区切りを作っているのです。

クマゼミ2.jpgクマゼミ
  セミは種の違いによって鳴き声が違うだけでなく、同じ地域にすんでいても鳴く時期や時間帯が重ならないようにすみ分けていると考えられています。例えばアブラゼミは、7月の下旬にはほぼ全国で鳴き声が聞かれますが、ツクツクボウシは鳴き始めが7月下旬〜8月上旬です。これは羽化して成虫になる時期のピークがずれているのです。また、西日本では、クマゼミはおもに午前中よく鳴きますが、アブラゼミは午後によく鳴くそうです(しかし、クマゼミが少ない関東地方ではアブラゼミは朝から鳴いています)。

エゾハルゼミ2.jpgエゾハルゼミ
  セミが鳴くのは、オスがメスを呼ぶためですが、セミたちが成虫になって活動できる期間は長くても数週間。交尾の成功率は種の存続に関わります。より確実にメスが同じ種のオスのところへやってきて交尾ができるように、他の種と鳴く時期や時間帯をずらしているのだと考えられます。このようにして、それぞれに異なる性質をもったセミの種が同じ地域にすんでいることで、私たちは身近な場所で様々なセミの鳴き声を聞くことができるのです。

(参考文献)
「都会にすむセミたち 温暖化の影響?」(2007年)沼田英治・初宿成彦. 海游社
「四季・動植物最前線」(1998年)百瀬成夫. 技報堂出版株式会社