ph_kakkou_m.jpg カッコウは5月の中旬頃に、東南アジアなどから日本へ渡ってきます。メスは、オスより少し遅れてやってきます。他の多くの夏鳥たちが4月のうちに渡ってくるのに比べると、カッコウの渡来はかなり遅いと言えます。また、カッコウは、自分で子育てせずに他の種の鳥の巣に卵を産み育てさせる「托卵」という習性をもっています。日本へのカッコウの渡来が遅いのは托卵する相手の鳥が巣を作った頃に渡来を合わせているからなのか、それともカッコウが主食としている毛虫(ガの仲間の幼虫)が4月にはまだ十分発生していないからなのか、はっきりとした理由はよくわかっていません。   

 カッコウのオスはより多くの子孫を残すために、(托卵するので自分たちは巣を作らないとはいえ)より良い縄張りを持とうとします。「良い縄張り」とは、托卵する相手の鳥がたくさんすんでいる場所です。カッコウが托卵する相手の鳥の種は、オオヨシキリやモズ、オナガなどおよそ30種もいるそうですが、カッコウの1羽1羽では相手の鳥の種は決まっています。カッコウは托卵を成功させるためにその鳥の卵に似せた卵を産みますが、自分の生む卵の持つ模様の個性に合わせて托卵の相手の鳥を1種に限定しているのです。 

アカモズとカッコウ3.jpgカッコウのヒナを世話するアカモズ
(写真提供/星野裕一 氏)

 しかし托卵される側も、黙って見ているわけではありません。カッコウが巣に近づいたら猛烈に攻撃したり、カッコウの卵を識別して巣の外に放り出したりします。カッコウが托卵を成功させるには「いかに里親の鳥の卵に似た卵を産むか」ということが重要です。卵が似ているほどヒナが無事育つ確率が高いので、その親の遺伝子がより多く受け継がれ、それを繰り返して世代を重ねるうちにカッコウの卵が里親の卵に似てくるのだと考えられています。  

オナガ_生態計画3.JPGオナガ(写真提供/(株)生態計画研究所)

 鳥類研究者の中村浩志氏の研究によると、1970年代頃からカッコウがオナガに托卵するようになったそうです。もともとカッコウは高原に、オナガは平地に生活していたのですが、それぞれが生活場所を拡大して両者の分布が重なったため、托卵が始まったようです。最初はみられなかったカッコウへの攻撃や、卵を見分けて放り出すといった行動をとるオナガが現れたのは、それからわずか10年ほどたった頃だそうです。  

 カッコウに托卵される鳥は、カッコウの卵を見分けられないと子孫を残せませんし、カッコウは里親の卵に似せた卵を産めないと子孫が残せません。私たちが気づかないところで起こっているこのようなせめぎ合いは、非常に短い期間に彼らの行動を新しい環境や生態系のつながりに適応させているのでしょう。 

 オナガに托卵するカッコウの卵は、今はまだあまりオナガに似ていないのですが、数十年後くらいにはそっくりな卵を産むようになるかもしれません。

(参考文献)「子育てしない鳥の子育て術」アニマNo.188(1988年)中村浩志. 平凡社
       「カッコウの子育て作戦」(1990年)松田喬・内田博. あかね書房