春の山菜としても知られるツクシ。茎にある節(はかま)を取ったツクシを炒めて、だし汁、しょうゆ、みりんで煮つめると「佃煮」に、湯がいたツクシをしょうゆと砂糖で味つけし、溶き卵を加えると「卵とじ」の出来あがりです。野草ならではの、ほろ苦い味わいの料理が楽しめます。このように食卓に登場するほど身近なイメージのあるツクシですが、どんな植物であるかはあまり知られていません。実は、「ツクシ」という名称の植物は、学術的には存在しません。ツクシは、シダ類である「スギナ」の胞子をつくる部分の呼び名です。スギナは、約3億年前に繁栄したスギナの祖先の植物から、体のつくりがほとんど変わっていないため、「生きた化石」とも言われています。古生代のスギナの祖先には、なんと10階建てのビルほどの高さ(約30メートル)にまで成長するものもいたそうです。
<子孫を増やすツクシの役割>
スギナは地下に根のような茎を伸ばし、そこから増えていくこともできますが、より広範囲に子孫を残すために、重要な役割を担うのがツクシです。ツクシは頭の部分から、1本あたりおよそ200万個の胞子を飛ばします。風に乗った胞子は、土の上に着地して、そこで芽を出します。この芽は、コケの一種ゼニゴケに似た平たい形をした「前葉体(ぜんようたい)」で、スギの枝に似たスギナとは全く異なる形をしています。
前葉体には精子を作る部分と卵を作る部分があり、精子と卵が出会うために、精子は泳いで移動しなければなりません。泳ぐためには、水が必要です。雨が降るなどして前葉体が水に覆われると、やっと受精することができるのです。そうしてスギナの成長が始まり、受精の役割をはたした前葉体は枯れてしまいます。
1本のツクシに200万個もの胞子がつまっているのは、これらの厳しい条件を乗り越えてスギナまで育つ確率がほんのわずかしかないからです。ひょろりとしたユーモラスな姿にも、このようなドラマが隠されていたとは驚きですね。
いきものみっけでは、1月からツクシのみっけ報告を集めています。旬の味覚に出会えるのも、いきものにふれ合う楽しみのひとつです。今年の春は、ツクシ採りに出かけてみてはいかがでしょう?ちなみに、美味しいツクシを見分けるポイントは、頭の部分が硬く緑色をしたものだそうです。



















