ホトケノザを漢字で書くと「仏の座」。向き合った2枚の丸い葉が、仏像の台座のように見えることが名前の由来です。その葉の付け根には、管状の花を咲かせますが、これは昆虫に蜜だけを持っていかれないように工夫された形なのだそうです。つまり、花の奥にある蜜で昆虫を誘い、入り口にあるおしべの先がその体にふれて花粉が運ばれるようにする、ホトケノザの戦略なのです。

ホトケノザの作戦は、それだけではありません。普通に先が開いて咲く花の他に、小さなつぼみのような花をつけているのです。これは、花びらが退化した「閉鎖花(へいさか)」と言われる花で、花が開くことはありません。驚いたことに、この中でもおしべとめしべが直接受粉をおこない、たくさんの種子が作られるそうです。この閉鎖花は、チョウやハチに花粉を運んでもらわなければならない通常の花に比べて、種をつける率が高いのが特徴です。

016_hotokenoza_0518_4.jpg では、なぜ受粉する確率が閉鎖花より低い通常の花をわざわざ咲かせるのでしょうか?実は、閉鎖花は自らの花粉で受精するために、健康な子孫を残せない可能性があるのです。通常の花で他の株の花粉を受粉した方が、遺伝的に多様で、丈夫な子孫を残すことができます。閉鎖花は、チョウやハチに来てもらえなかった時のための、保険のようなものです。

さらにホトケノザは、その種子にもしたたかな戦略があります。アリの好物であるエライオソーム(脂肪酸の一種)を種子につけることによって、遠くまでアリに運んでもらうのです。アリは、好物の部分をかじりとると、巣の近くに種子を捨ててしまうので、条件が合えばホトケノザはそこで芽を出すことができるというわけです。

このような仕組みは、種子を鳥に食べられることも、風にのせて運ぶこともできないホトケノザが、限られた条件のなかで、子孫を残すために生み出した工夫なのです。一見すると、畑や空き地、道ばたなどに生えるか弱い草花のようですが、そこには、したたかに生きる野生の力強さが隠されているのですね。