報告件数:2009年度 858件、2010年度 1017件

図1:図1. ツマグロヒョウモンの調査結果(2009年度・2010年度いきものみっけ)
図1. ツマグロヒョウモンの調査結果
(2009年度・2010年度いきものみっけ)
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図2:ツマグロヒョウモンの分布(環境省「日本の動物分布表」より)
図2:ツマグロヒョウモンの分布(環境省「日本の動物分布表」より)
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ツマグロヒョウモンは地球温暖化等の影響によって分布が北へ拡大しているといわれています。いきものみっけでは寄せられた情報と過去に調査された結果を比較して、実際に分布が拡大しているのか、北はどの辺りまで見られるのかを調べました。

2010年のいきものみっけでは、2009年いきものみっけにくらべ、福島県においてより北の地域からの報告がありました。また、2009年には報告がなかった山形県からも1件の報告がありました(図1)。2009年と2010年の報告をあわせると、環境省の日本の動物分布図集(図2)では記録の無い地域(福島県4件、宮城県3件、山形県1件)からの報告が得られる結果となりました。いずれの報告も写真が添付されており、信頼度の高い貴重な記録といえます。

関東地方では2000年までツマグロヒョウモンが確認された地点はわずかでしたが、「いきものみっけ平成21年度(2009年)夏の調査結果まとめ」で報告したように、2009年いきものみっけでは関東地方から寄せられた報告の数と確認地点、4月・5月における確認の状況から、関東地方での定着(安定して世代交代を繰り返している)は確実だと考察しました。

関東地方北部に注目すると、群馬県・栃木県ではそれぞれ2009年に報告のあった地域よりも北の地域から報告がありました。

過去の文献およびいきものみっけの結果から、ツマグロヒョウモンの確実な太平洋側の分布の北限は、現在のところ群馬県、栃木県、茨城県と考えられます。しかし、いきものみっけの結果ではこれらの県における4月・5月の報告はわずかでした。また、文献では、これらの県の北部における越冬や世代交代の確認は述べられていません。今後は関東地方北部における定着が確実となるのか、新潟県・福島県より北の地方で確認が増加するのか、注目していく必要があります。

(解説)

南方系のチョウであるツマグロヒョウモンは、1980年代までは近畿地方より西に分布していました。それが今回のいきものみっけで得られた結果のように分布を北へ広げてきた事について、いくつかの理由が考えられます。

一つは、冬の気温の上昇です。近年の地球温暖化やヒートアイランド現象によって、幼虫が越冬しやすくなり、冬の気温にツマグロヒョウモンが耐えられる地域が広がっていることが考えられます。二つ目は、幼虫のエサになる植物です。他のヒョウモンチョウの仲間が野生の植物を食草としているのに対し、ツマグロヒョウモンはパンジー、ビオラなどスミレ科の園芸植物も利用します。それらの園芸植物が1990年代後半から各地の市街地や住宅地に広く植えられるようになったため、幼虫のエサが豊富になりました。また品種改良や前述の冬の気温の上昇により、一年を通して食草を得られるようになってきたことも要因となっているのでしょう。三つ目は、繁殖力が強いことです。ツマグロヒョウモンは年に4、5回ほど発生を繰り返すため、エサや気温などの条件が良ければ、短期間に数を増やして分布を広げることができます。しかし、そのようにして新たに進出した地域では、気候変動などの影響を受けやすいため、分布の境界線付近では年ごとに生息の状況が変化していると考えられます。

このように、地球温暖化や都市化、園芸植物の栽培など複数の要因によって、本来定着していなかった地域の環境が、ツマグロヒョウモンの生態にうまく合致するようになった結果、分布を拡大してきたと考えられます。

引用文献
環境省自然環境局生物多様性センター(2010)自然環境保全基礎調査 動物分布調査 日本の動物分布図集.1072pp.