報告件数:2008年度 1413件、2009年度 565件、2010年度 495件

- 図1.クマゼミの分布(2008・2009・2010年度いきものみっけ)
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- 図3.1930年〜1942年の観測をもとにしたクマゼミ初鳴日の等期日線図
(大後・鈴木,1947)
2008年~2010年のいきものみっけの結果(図1)からクマゼミの分布についてまとめると、太平洋側では茨城県南部から栃木県南部、群馬県南部を結ぶ線が、ほぼ分布の北限だと考えられます。日本海側については、寄せられた情報だけでは、はっきりとした分布の線を引くことはできませんでしたが、環境省「日本の動物分布図表」(2010)によれば、石川県が日本海側の分布の北限とされています。
林(1991)によるクマゼミの分布記録(図2)では、古いものでは1930年代の記録も含まれています。これを図1と比較すると、クマゼミの分布の北限はあまり変化していないと思われます。1930年から1942年の中央気象台(当時)の生物季節観測によるクマゼミの初鳴き日の等期日線(図3)では、最も遅い7月31日の線は、関東地方にもかかっており、これは分布の北限に一致するものではありませんが、この線より北にある多少の範囲の地域にもクマゼミが分布していたことを示唆します。
また、1930年代の文献に、東京都豊島区・世田谷区での鳴き声の記録や、神奈川県横浜市でクマゼミが「余り多からず」という記述(「昆虫界」1933)、現在の茨城県稲敷市での採集記録(福田,1937)などがあります。1949年には現在の群馬県藤岡市でクマゼミの採集・目撃記録がありますが、文献にはその記載とともに「埼玉県浦和市付近が北限とされていたクマゼミが、今度群馬県南部で採集され...」との記述があります(布施,1950)。
近年、クマゼミは温暖化の影響による北への分布の拡大が注目されています。しかし、これまで述べてきたようなことから、クマゼミの分布の北限は1930年代・1940年代と比較しても、それほど大きく北へ移動してはいないことがわかります。
クマゼミは、成虫に飛翔力がある他、幼虫が植栽木について運ばれるなどして、もとの生息地から離れた場所に移動することがあると言われています。今後、温暖化による気温の上昇でクマゼミが移動した場所に定着するようになり、やがて分布が広がる可能性があります。また、クマゼミの分布の変化には都市化の影響もあると考えられています(沼田・初宿,2007)。
分布調査と違いその場所での生物の増減をいうことは難しいのですが、2009年・2010年のいきものみっけでは、関東地方からの報告で「昔は聞いたことがなかったが、近年鳴き声を聞くようになった」というコメントが多くあり、また一方で、「数は多くないと思う」「鳴き声を聞くのは年に数回」というコメントもありました。これらのコメントから考えると関東地方におけるクマゼミについては、「以前から生息していたものの個体数は多くなかったが、気温の上昇や都市化などにより次第にその数を増やして目立つようになり、人々が注目するようになった」という考え方もできます。
- 引用文献
- 環境省自然環境局生物多様性センター(2010)自然環境保全基礎調査 動物分布調査 日本の動物分布図集.1072pp.
- 林正美 (1991) 日本産蝉の分布調査報告(3) −ニイニイゼミ属、ケナガニイニイ属、クマゼミ属--. 日本セミの会会報 10(1/2): 21-29.
- 大後美保・鈴木雄次(1947)日本生物季節論.pp217.北隆館.
- 加藤正世 編(1933)昆虫界Ⅰ(4): pp434.
- 福田敏夫(1937)茨城のクマゼミ.昆虫界Ⅴ(35): 30-33.
- 布施秀明(1950)群馬県で採集されたクマゼミ.新昆虫3(4).pp46.
- 橋本洽二(1979) 東京にクマゼミ発生. 日本セミの会会報 1(3): 39-43.
- 沼田英治・初宿成彦(2007) 都会にすむセミたち 温暖化の影響?. pp162. 海遊社.


















