報告件数:2009年度 645件、2010年度 708件

- 図1.アオスジアゲハの分布(2009年度・2010年度いきものみっけ)
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- 図2:タブノキの分布(Horikawa,1972を一部改変)

- 図3.東北地方におけるアオスジアゲハの記録(高橋,2008より)
アオスジアゲハは本来、暖地の照葉樹林に生息するチョウと考えられますが、食樹(幼虫が葉を食べる植物)であるクスノキが、公園や市街地などに植えられるようになって、分布を広げているのではないかといわれています。これまで、分布の北限は日本海側が秋田県由利本荘市(成田,2000)、太平洋側が岩手県山田町とされていましたが(福田ら,1982)、近年は青森県における確認が報告されているため(高橋,2008・工藤,2008)特に東北地方からの報告に注目しました。
2009年いきものみっけでは、環境省自然環境保全基礎調査の第3回(1984年までの分布)および同第5回(1998年までの分布)の結果と比較して、約25年間で分布に大きな変化はないことがわかりました。2010年いきものみっけでは、2009年に引き続き岩手県・秋田県・山形県からは報告がなく、太平洋側からの報告の最北は宮城県仙台市で、日本海側では、2009年には報告がなかった青森県からの報告がありました。しかしながら連続した密な報告はなく分布北上の様子は詳しくはわかりませんでした。(図1)。
アオスジアゲハは、クスノキ科のクスノキ、タブノキ、シロダモなどの植物を食樹として利用します。これらの植物は、西日本には広く分布していますが、東日本ではおもに海岸沿いに分布しています。そのため、アオスジアゲハもこれらの植物と同じような分布を示します。クスノキ科の植物の中で最も北まで分布しているのはタブノキで、東北地方では、海岸線にそって断続的に分布しており、最北は青森県深浦町です(図2)。2010年いきものみっけでは、この青森県深浦町からアオスジアゲハの報告がありました。
図3は、東北地方におけるナガサキアゲハの記録がある場所です(高橋,2008)。深浦町では2007年にアオスジアゲハの発生が確認されましたが(工藤,2008)、従来のアオスジアゲハの北限とされていた秋田県由利本荘市のタブノキの自生地からは約150km離れています。2007年に秋田市内の植栽のタブノキでアオスジアゲハの越冬蛹が発見された(鈴木,2007)ことから、アオスジアゲハは由利本荘市から深浦町の間に植栽されたタブノキをたどって、青森県まで北上した可能性があるとされています(工藤,2008)。またそれ以前にも青森県に度々飛来していたものの越冬できずにいましたが、2007年の暖冬により越冬できた個体が子孫を残し、2010年まで世代を繰り返していると考えられています(工藤,2008)。しかし今後、冬が非常に寒い年には越冬できずに絶えてしまう可能性もあります。
アオスジアゲハの分布の北限付近では、タブノキが広く植えられるなどして食物が安定供給されることで個体数が増え遺伝的な多様性が確保されることや、冬季の気温が蛹が越冬できる程度に安定する、といったいくつもの条件がそろわなければ、定着することは難しいと考えられます。この25年間でアオスジアゲハの分布が大きく変化していないことは、その難しさを物語っているのではないでしょうか。
- 引用文献
- 福田晴夫ほか (1982) 原色日本蝶類生態 図鑑Ⅰ: 94-96. 保育社.
- 成田正弘(2000)秋田の蝶:14-15.秋田自然史研究会.
- 鈴木信愛 (2007) 秋田県秋田市でアオスジアゲハ採蛹.蝶研フィールド(253): 30.
- 工藤誠也 (2008) 青森県におけるアオスジアゲハの発生記録. 月刊むし(445): 9-12.
- 高橋敏文(2008)青森県まで北上したアオスジアゲハ.月刊むし(445):8-9.
- Yoshiwo Horikawa (1972) Atlas of the Japanese flora : an introduction to plant sociology of East Asia. 96. Gakken Co..

















