ウグイスは誰でも知っているその特徴的なさえずりと、ふつうの住宅地でも身近に声が聞けることから、私たちに春を教えてくれる鳥の代表と言っていいでしょう。森林や草原のよくしげったやぶのある場所で繁殖しますが、緑の多い住宅地でも冬を過ごし繁殖地に戻る前にはよくさえずり、全国でその声を聞くことができます。
写真1. 枝先で大きな声でさえずるウグイス 撮影:中島久二瑛.
ウグイスは開けたところにはなかなか出てこないので、姿を見たことがある人は少ないかも知れません。「うぐいす色」と呼ばれる色合いよりはもう少し茶色っぽい地味で単調な色をしています。さえずりの時だけ、枝先に出てくることもあります【写真1】。よく間違えられるのはメジロで、「うぐいす色」に近い緑色をして、枝先のよく目立つところにも出てきます。【写真2】
写真2. これはよく間違われるメジロ 撮影:中村桂子
さえずりは野鳥にとって、オスがメスをひきつけメスはオスを選ぶ求愛のための儀式の意味と、ペアが成立して巣作りがはじまったあとはオスがペアの相手や自分たちの巣場所や餌場を他のオスから守る、なわばり防衛の意味があります。つまりさえずりは繁殖行動の一部なのです。ウグイスは「ホーホケキョ」という普通のさえずりの他、「ケキョケキョケキョケキョ・・・」という早口の激しい鳴き方を耳にすることもありますがこれもさえずりのひとつです。「谷渡り」と呼ばれオス同士が争う際のおどしの意味があります。また「チャッチャッ」というリズミカルな声も出しますが、これは繁殖とは関係なくオスもメスも一年中出す「地鳴き」というもので、ウグイスでは特に「笹鳴き」とも呼ばれます。
鳥のさえずりのシーズンは、気温や日照時間に大きく影響されます。小鳥類の子育てにはたくさんの食物(昆虫など)が必要ですから、繁殖を開始するさえずりのタイミングは、昆虫の発生や昆虫の餌となる植物の芽出しのシーズンと合うように遺伝子によりプログラムされているのです。
地球温暖化で気温が上がると、いろいろな鳥のさえずりの開始時期が早くなっていく傾向がでてきました。同じ場所で長年観察することで、こうしたことが明らかになってきました。ところが昆虫や植物の季節が早まる程度と鳥の季節が早まる程度が異なるので、そのずれにより鳥の食物の内容が変わってしまい、巣立たせるひなの数が減ってしまう種類があることがヨーロッパでは明らかになっています。こうした不具合が起きていないかどうか、日本でも様々な記録を集めて解析していく必要があります。いきものみっけの記録も、こうした生きものの世界の変化を知る大事な手がかりになるのです。
- 古南幸弘(こみなみ・ゆきひろ)
- (財)日本野鳥の会 自然保護室 室長代理。1986年に(財)日本野鳥の会事務局に専従職員として入局。サンクチュアリのレンジャーを経て、1996年から、野鳥保護のための政策提言や、それを支えるデータ収集に携わる。(財)日本野鳥の会 http://www.wbsj.org/



















