みなさん、いきものみっけていらっしゃいますか?

今年のいきものみっけでは、いろいろな生き物を対象種に選んでいますが、セミの仲間からは3種(クマゼミ、アブラゼミ、エゾハルゼミ)を選んで、いつ・どこで鳴いていたかを報告していただきました。ちなみに、私の住んでいる福岡市では、クマゼミとアブラゼミの鳴き声を今年初めて聞いたのは7月2日で、最後に聞いたのはクマゼミが9月17日、アブラゼミが9月23日でした。

セミの鳴き始めの時期は、その年の6月や7月などの平均気温と強い関係をもっていることが統計学上明らかにされています(紙谷, 2009)。しかし残念ながら、このような気温情報だけに基づいて初鳴き日を予測しても、誤差がやや大きく、桜の開花予測のような正確な結果は得られません。それはどうやら、セミの初鳴き日は気温だけに依存していないからです。セミが雨の日にほとんど鳴かないことは、多くの方がご存知かとは思いますが、初鳴き日も同様で、雨の日に観察されることは多くありません。福岡市でも、過去8年間で降水量が1mm以上だった初鳴き日は1回もありません。雨の日には物理的に鳴けなくなることはないので、鳴かないことは何らかの理由があるはずです。

セミは1匹だけで鳴いていると、鳥などに食べられてしまうので、1匹だけで鳴くことを避ける傾向があります。例えば、北アメリカに生息する17年ゼミは17年に1年だけ、数億匹が一斉に羽化して、鳴き始めます。このような特異な習性が進化したのは、できるだけ多くの個体が一緒に鳴くことで、生き延びる可能性が高まったことが大きな要因だったと考えられています(吉村, 2005)。また、セミのオスはメスと繁殖するために鳴いているのですが、雨の日のようにメスの反応が鈍くなる日や時間帯には、オスは繁殖できなくなるため鳴かなくなります。

気温は、セミの初鳴き日だけでなく、分布にも大きく影響しています。このため、気象情報をもとに、現在や過去、未来の分布状態を推測することができます(紙谷, 2009)。今後も気温が上昇し続けると、どうなってしまうのでしょうか?非常におおまかな推測ですが、もし、全国の年平均気温が一律1℃上昇したら、クマゼミでは分布域が約1.3倍も広がると推測できます。一方、エゾゼミという標高の高い場所にしか生息していないセミなどの場合には、気温が上昇すると分布域が減少してしまうと考えられています(初宿, 2008)。

今回紹介したセミの話は、セミの生態のほんの一部分でしかありません。まだ、沢山の謎が残されたままになっています。「いきものみっけ」を通して、生き物と気象の関係や、生き物がなぜそこにいるのか・いないのか、などに興味をもっていただければ幸いです。

< 参考文献 >
紙谷聡志, 2009. 暑くなる地球とセミ. URL: http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/INSECT2009/00flame.html
初宿成彦, 2008. 温暖化とセミの分布変化. 昆虫と自然 43(4): 6-10.
吉村仁, 2005. 素数ゼミの謎. 文藝春秋.
紙谷聡志(かみたに さとし)
九州大学農学研究院 生物資源開発管理学部門動物昆虫学講座 准教授。専門はヨコバイ類の分類で、おもに日本および台湾、インドネシアなどの種について研究している。また、地球の気候変動が昆虫類に与える影響の中で、初鳴き日や初見日の変化や、分布域の変化についても研究を行っている。