いきものみっけのシンポジウムで南方熊楠(みなかたくまぐす)の和歌山に行ってきました。
みなさん、南方熊楠って、知ってますか。
日本が世界に誇る生物学者にして民俗学者、おそらく当時の地球上で最も好奇心が旺盛だった、元祖いきものみっけ。
レオナルド・ダ・ビンチに勝るとも劣らない頭脳明晰ぶりで18カ国語を操り、40種類もの粘菌を発見し、世界の権威『ネイチャー誌』に論文掲載51 回!学位もなく、肩書きもなく、研究所にも属さず、近所の人からは奇人変人のオヤジだと思われながら、生物学、植物学、天文学、民俗学、文化人類学、あり とあらゆるジャンルに精通し、世界中に友達がいた熊楠。いのちの秘密がわかるかもしれないと一番エネルギーを注いだのが、動物と植物の両方の特徴を持つ粘 菌の研究だったそうです。
1907年に起こった神社合祀に反対する運動を起こし、「大きな木を切るなんて民俗学的にも生物学的にもとんでもない!」とたったひとりで立ち向 かったところへ柳田國男が加勢、それが広がって10年で神社合祀を廃案にしたり、天皇に御前講義をした際に粘菌を森永キャラメルの空き箱に入れて献上した り、ほんとうに周りがアッと言うエピソードが多すぎて、功績が霞んでいるような気すらします。
が、日本にエコロジーという言葉を紹介したのは、この熊楠。
そして自然を守る国民運動を日本で最初に始めて勝ったのも、この熊楠。
でも元祖いきものみっけは、この日本の空前のエコブームを見て、なんていうかなぁ。ブームならもっと自然が守れてもいいんじゃないの、なんて言いそうだなぁ。
そんな和歌山で面白い言葉をみつけました。「巻き枯らし」(注1)、知ってますか。安い外材に圧されて国産の木材が売れなく なり採算がとれなくて間伐まで手が回らないので、いま日本の森(スギやヒノキなど針葉樹の人工林)は荒れています。でも無理して木材にしようと思うから 「荒れてる」ことになるので、無理しないで自然に還す、針葉樹の森から広葉樹の森に還す、シカやクマに還す、ことにすればいいんじゃないの、という話が出 ています。そんなときに有効な手段のひとつがこの「巻き枯らし」。
一瞬、え、どうして枯らすことが森にいいのと耳を疑う話ですが、まあお聞きください。別名「立ち枯らし」ともいうらしく、昔からある切り倒しにくい雑木の 皮を3月から9月頃にぐるっと一周30センチぐらい剥いで枯らす方法なのだそうです。これだと山林作業者の手が足りなくても、プロではない林業に不慣れな ボランティアのみなさんでも、ノコギリや大きめのマイナスドライバーや竹ベラでできて、周りの小さな赤ちゃんの木も傷つけないから、自然の植生(しょくせ い)を傷つけず、ゆっくり広葉樹林へ転換できる、というわけなのです。
巻き枯らしをした木の葉が赤茶けてくるまで半年から3~4年、完全に落葉するまでさらに数年かかるので、そのあいだに林へ入ってくる日の光がだんだんふえ る。 採算の合わない林業がほとんどになってしまい、間伐できずに森が荒れて困っている日本がいま必要とする、人工林から自然林への転換に有効な、ひとつの手法 なのだそうです。
でも木って、皮を剥いだだけで枯れちゃうんですね。しかも、ゆっくりゆっくりと。なんだかかわいそうな気もするけれど、森のためにはそういうバラン スを取る事も必要なんですね。自然って、いきものって、まだまだみつけるところ、いっぱいあるなあ。南方熊楠みたいに一生、いろんなものに好奇心もって、 みつけていきたいな、と思った和歌山でした。
- 注1:巻き枯らし
- いきものみっけシンポジウムで出会ったNGO「いちいがしの会」に教えてもらった『明日なき森~カメムシ先生が熊野で語る』という本に載っていた 話です。他にも聞いた事のない言葉、忘れていた名前がたくさん詰まっていてとても刺激的でした。ぜひみなさんも読んでみてください。
- マエキタミヤコ
- 「いきものみっけ」キャンペーンディレクター:コピーライター/クリエイティブディレクター。広告メディアクリエイティブ「サステナ」代表。大小多数NGOの広告をはじめ「フードマイレージ」「リスペクト3R」プロジェクトなどを手がける。

















