テレビコマーシャルなどで(コーヒーか何かだったかな)、「違いのわかる男」というキャッチコピーを見かけたことがあるけれど、いきものみっけでは「違いがわかる」というのはとても大切なことだ。というよりも、もしかしたらいきものを見つける上での真髄かもしれない。
フィールド(注1)に出ると、草木や昆虫、いろいろないきものに出会うことができる。「これはタンポポ、これはモンシロチョ ウ・・・」と、野歩きに慣れてくれば自然といきものの名前がでてくる。 ぱっと何気なく目を向けた野原に名前のわかるいきものが増えてくると、何ともうれしい気持ちになる。「名も知れない黒蟻」から「クロヤマアリ」に、「水色 のきれいな花の咲く草花」から「タチツボスミレ」と名前がわかるようになると、なんだか見ている野山の正体がちょっとだけわかったような気がしてくる。
もちろんこれはまさしく気のせいなのだけれど、その野山を知るためのとっかかりになったり、さらなる好奇心を得られたりすることはたしかだね。
さて、そうやってどんどんとフィールドに出ると、出会えるいきものや知っているいきものがだんだんと増えてゆく。しかし、やがてそれは頭打ちになってくる、「どうしよう、もっともっといきものを知りたいのに!」。
その壁を突き破るのが「見分けの力」をつけること、すなわち「違いのわかるみっけにん」になることだ。いきものはじつに多種多様。文字通りいろいろ な種、いろいろな姿のものがいる。しかし実はその違いが一見ほんの少ししかなく、同じ種類に見えてしまっている場合がある。そのわずかな違いを見つけて もっとたくさんのいきものに気付き、出会おう。
たとえばオオカマキリとチョウセンカマキリはよく似ていて分かりづらいが、チョウセンカマキリの後ろばねが透き通っているのに対してオオカマキリは 濃い紫色をしている。確かめるコツは、指で2・3回カマキリをつつく、そうやってカマキリに喧嘩を売ると、大概はねを全開!ムキ―ッと怒るので、「はい、 君はオオカマキリだね」とわかる。
樹木のヒノキとサワラは慣れ親しんでいないと区別に困ることがあるけれど、葉の裏を見ると白い筋がY字にあるのがヒノキ、H字にあるのがサワラ。林学を学ぶ学生は「ヒY!Hサワラないで!!」と覚えるとかなんとか。
最後に、このコラムの前半に「これはタンポポ、これはモンシロチョウ・・・」というくだりがあったけれど、皆さん本当にモンシロチョウ(注2)をちゃんと認識しているだろうか?よく似たスジグロシロチョウでなくて、まさしくモンシロチョウと知っているならバッチリ、「違いのわかるみっけにん」だ。春のいきものしらべ情報も安心して待っていられる。
- 注1:フィールド
- 自然観察や調査を仕事や趣味にしている人が野外を指すときにつかう言葉。厳密には、調査対象の場所を指して言うが、一般に野外に出る時にも「フィールドに出る」ということがある。
- 注2:モンシロチョウとスジグロシロチョウ
- 両種ともにシロチョウ科。白地に黒字の紋が特徴だが、モンシロチョウはうしろばねのスジが特に色づかないのに対して、スジグロシロチョウでははねのスジが(特に縁付近)黒く色づく。
- 石塚あらた
- 環境省生物多様性センター技術専門員。同センターにおいて「いきものみっけ」プロジェクトや自然環境保全基礎調査業務などにかかわる。専門は昆虫学、特に河川に住む流水性昆虫に興味がある。最近のマイブームはシラスに混じる他のいきものさがし。

















